東京2020オリンピックが、盛り上がっていますね。オリンピックは、33競技が実施され、普段は関心を持っていない競技も、「オリンピックだから」ということで、TVでの放送を見る方も多いと思います。
特に湾岸エリアの方は、選手村(晴海)やメインプレスセンター(東京ビッグサイト)が近く、IDカードをぶら下げた関係者を見かけることも多く、街全体がオリンピックの旗などで装飾されていますので、関心を持っている方も多いと思います。
いよいよ7月30日からは、陸上競技も始まりました。陸上競技は、技術より身体能力が競技力に占める割合が大きいため、日本は劣勢になる種目が多くなっています。そんな中、今大会は、4×100メートルリレーに大きな期待が寄せられています。オリンピックを楽しむために、その競技や選手の特徴を知ることで、楽しみも増えますので、同種目を解説したいと思います。
ちなみに、4×100メートルリレーは、「4ケイ(継)」とも言われ、4×400メートルリレーは、1マイルに近いことから「マイル(リレー)」とも言われています。
■まず、4×100メートルリレーが注目を浴びる理由ですが、
その1:過去の好成績
4×100メートルリレーは、過去のオリンピックでも好成績を残してきました。
2008年北京大会で初めて、3着(後に上位国が反則で、銀メダルに繰り上がり)とメダルを獲得し、2016年リオ大会でも、銀メダルを獲得しています。
また、その後、
2017年に桐生選手が、日本人初となる9秒台の9秒98を出し
2019年にサニブラウン選手が9秒97、小池選手が9秒98
2021年は、山縣選手が9秒95(現日本記録)を出し、
日本人で9秒台が4名揃う程に充実して来ました。
日本の歴代記録は、以下の通りです。
記録 | 名前 | 所属(当時) | 年 | |
1 | 9“95 | 山縣 亮太 | セイコー | 2021年 |
2 | 9”97 | サニブラウン・A・ハキーム | フロリダ大 | 2019年 |
3 | 9”98 | 桐生 祥秀 | 東洋大 | 2017年 |
4 | 9”98 | 小池 祐貴 | 住友電工 | 2019年 |
5 | 10”00 | 伊東 浩司 | 富士通 | 1998年 |
6 | 10”01 | 多田 修平 | 住友電工 | 2021年 |
7 | 10”02 | 朝原 宣治 | 大阪ガス | 2001年 |
8 | 10”03 | 末續 慎吾 | ミズノ | 2003年 |
9 | 10”03 | ケンブリッジ 飛鳥 | Nike | 2020年 |
10 | 10”07 | 江里口 匡史 | 早大 | 2009年 |
こうしてみると、日本歴代1~4位および6位が参加する今大会は、歴代最速となるのは、間違いがないと思います。
その2:個人のスキルが劣る部を、チームワークや技術で上回り、世界で通用する
この4年で、日本記録を3度更新するほど、壁を破って来た日本短距離陣ですが、世界との力差は、まだ大きい競技となっています。
この4×100メートルリレーに感動する理由の一つが、
「欧米選手に体格差がある中で、チームワークや技術で上回り、勝利することが他の競技と重なる。」
「大規模資本の欧米会社に対して、技術力や労使の一体感で、挑む日本企業と重なる」点もある気がしています。
出場4選手の持ちタイムの合計では劣る中、バトン技術で、その差を詰めて逆転しています。今大会も期待したいですね。
■4×100メートルリレーのルール
4×100メートルリレーのルールですが、以下のものがあります。
・陸上のトラックは、1周が400メートルに設定されています。1人100メートルずつを走り、ちょうど1周することになります。
・自分のコースは決められており、その枠からはみ出すことは失格となります。カーブがありますので、スタートは、傾斜した位置からスタートし、ゴールは横並びとなります。
・ボタンの受け渡しゾーンは、決められています。加速ゾーンが10メートル、バトン受け渡しのテイクオーバーゾーンが20メートルと決められています。2018年度より、第1走者→第2走者、第2走者→第3走者は加速ゾーンがなくなり、テイクオーバーゾーンが30メートルとなりました。
ですので、早い選手が200メートルを走ることや、遅い選手が50メートルだけを走ることは、このバトン受け渡しゾーンを超えて失格となります。
トップ選手の最高速度は、時速40キロに達しますので、このバトン受け渡しも、次走者が早くスタートすればバトンが渡せずに、次走者が遅くスタートするとバトンが詰まるまたは接触する場合もあります。
■走者の特徴
4×100メートルリレーは、トラックを1周走ることから、
直線を走る人(2走・4走)とカーブを走る人(1走・3走)があります。
また、バトンも
私だけの人(1走)
受けて、渡す人(2走・3走)
受け取るだけの人(4走)に分類されます。
これらの特徴を合わせて、走順を戦略的に決める必要があります。
それぞれの特徴は、
・1走に向いている人
スタートダッシュが早い人
走力が安定している人
・2走に向いている人
一番長い距離を走るため、スピードが一番ある人
最高速度が速い人
200メートルも走れる人
・3走に向いている人
バトンが上手で器用な人
カーブに走り慣れている人
・4走に向いている人
スピードがある人
勝負強い人
があります。エースを2走か、4走に投入するかは、チーム事情によります。ゴールシーンが目立つので、4走がエースのイメージがありますが、4走に渡す前に勝負が決着するケースも多いため、2走にエースを置くケースも多くあります。
また、バトンは、渡すより受け取る方が責任が重い(スタートするタイミングが重要)ので、カーブで受け取り、カーブで渡す3走の役割が大きいです。
■東京2020オリンピックの走順予想
以上を踏まえて、東京2020オリンピックの走順予想をしてみたいと思います。
まず、東京2020オリンピックの4×100メートルリレーのメンバーは、
山縣 亮太選手
桐生 祥秀選手
小池 祐貴選手
多田 修平選手
デーデー ブルーノ選手
の5名となります。
代表選手選考会となった2021年日本選手権の結果は、
また、2019年の世界選手権では、銅メダルを獲得しましたが、走順は以下の通りでした。
1走:多田修平選手
2走:白石黄良々選手
3走:桐生祥秀選手
4走:サニブラウン・ハキーム選手
2016年のリオオリンピックの走順は、
1走:山縣亮太選手
2走:飯塚翔太選手
3走:桐生祥秀選手
4走:ケンブリッジ飛鳥選手
となっています。
その上で、走順を予想すると、
1走:多田修平選手=スタートが早い多田選手の特徴が活かせます。
2走:山縣亮太選手=日本記録保持者であり、エース格
3走:桐生祥秀選手=3走のバトン経験が豊富
4走:デーデー ブルーノ選手または小池 祐貴選手
デーデー ブルーノ選手は、日本選手権でダークホース的な存在で2位に入り、自己ベストも更新し、急成長中で期待したい面があるものの、日本代表でのリレー経験もなく、世界選手権の出場経験もないことが、最終的にどう決定されるでしょうか。
走順も大きな話題となっており、走順も考えるのも楽しみですね。
4×100メートルリレーは、
8月5日(木)11:30 予選
8月6日(金)22:50 決勝
が行われます。金メダル目指して、“爆走”を期待したいです。
参考:日本陸上競技連盟
https://www.jaaf.or.jp/olympic/tokyo2020/